2013年8月5日月曜日

回転ドア(Revolving Door)と継続性(Consistency)

次期FRB議長の人選を巡って、ローレンス・サマーズ氏の名前が登場している。氏は(学術的な部分や官僚としての業績を一旦横に置くと)「公的機関と民間の人事を交互に務め、うまいこと稼いでいる」という印象を持たれているとのことだ。曰く、FRB議長という公益性の高い職業にあっては、民間企業との繋がりが強いと問題になる。民間企業と公的機関間の人事の回転ドア(Revolving Door)現象は氏に向かい風になるのでは無いか…と。





確かに、欧米(特に米国)の金融機関やシンクタンクのトップ、著名な大学教授の略歴を見ると、見事に「回転ドア」な面々が多い。生え抜きが重視される日本とは違いが際立つ。どちらが良いのかという点は個々の国の事情、慣習によって異なるだろうが、一般的に言えば、専門性を磨くことが出来れば、あとは属する組織は問わないというスタイルが望ましいと思う。よって私自身は、「軸がしっかりしていれば」回転ドアを通ることは肯定的に捉えている。つまり、回転ドアを何度通ろうと確たる個性とパーソナリティがあれば問題無いと。ジェネラリストの時代は終わる・・・「ワーク・シフト(原題 The Shift)」でリンダ・グラットン氏が指摘した点は首肯する部分がいくつもあった。


さて、Economist誌は日本の労働慣行を「One Shot Society」と表現した。つまり、一度就職してしまえばその後特に変化は無い(大学入学も同様)。最初のショットが本当に重要であることの比喩である(なお、韓国は日本以上にOne Shotと書かれていた)。

生え抜きという観点では「継続性(Consistency)」が重視される。この度離任する米国駐日大使
のジョン・ルース氏は、「私は5人の首相と付き合った。後任のジャクリーン・ケネディ次期大使は1人だけと付き合うのでうらやましい」と語ったそうだ。実際のビジネスもそうだが、「人脈」が寄与する場面は相応に多い。結局ビジネスは会社対会社の契約といっても、それを企画立案、実行するのは生身の人間なので、心情が全く影響しないというと、そういうことは無いだろう。

ルース大使とは、アメリカ留学時代の大学が開催した日本人同窓会で会う機会があった。大使は同学の卒業生では無いが、開催地が米国大使公邸のため、招待されていたのだ。会話したのは2、3分程度ではあったが、「トモダチ」という日本語をいたく気に入っているそうで、「海外に行って『トモダチ』を作れるのはとても素晴らしいことだ。留学であれ、海外勤務であれ」と仰ってくれたことが印象に残っている。どこの会社で働いているか聞かれ、「(その会社)もアメリカのビッグトモダチ!」と語っていたが…。

ルース大使が果たして、日本の元首たちと「トモダチ」になれたかどうかは知る由も無いが、彼自身は比較的日本組織の中でも「ウケ」が良かったそうである。確かに、短時間であったものの、大使というよりはフレンドリーな企業経営者といった風情で誰にでも分け隔てなく接するタイプの人物なのだろう。

米国は一般的に回転ドアを通ることでキャリアアップが望めるが、日本ではその逆といわれる。一定の継続性を尊ぶのは日米共通といえ、この違いがあるのは、極めて漠然と言うと、専門性を根幹に持っているかどうかの違いなのかもしれない。

写真は大使公邸での1枚。

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